現在、建設業界はさまざまな経済的リスクと不確実性に直面しています。特に、資材単価の高騰や先行きの見えない景気状況の中で、多くの企業が資金繰りや収益の確保に悩まされている状況です。以下では、建設業が抱える主なリスクとその対策について整理しました。
資材単価の高騰
建設コストの増加
鋼材やセメント、木材、燃料といった建設に欠かせない資材が高騰しており、総コストが膨らむ要因になっています。工事の開始時に予算を確保していたとしても、資材の価格が急激に上がると予算を超過するリスクが高まります。(1か月前に見積った商品の価格が高騰したり、注文した商品を出荷してもらえないなど)
従来の見積もり価格や積算システムだけに頼らず、受注時に最新の市場価格を調査し、価格の変動に備える体制が重要です。
利益率の圧迫
資材のコストが上がっても、すぐに取引先や発注元に価格転嫁ができないことが多く、結果的に企業の利益率が圧迫される状況です。このため、多くの企業が長期的な経営計画の見直しを迫られています。
先行き不透明な景気の影響

受注数の減少
経済の先行きが見えないと、大規模プロジェクトが延期されることも多く、公共事業の減少や民間投資の低迷も予想されます。これにより、特に中小建設業者にとって厳しい受注環境が続くことが考えられます。
今からでも間に合う対策
- 民間市場への多角的なアプローチ
- 小規模工事や修繕ニーズの取り込み
- 環境配慮型・省エネルギー関連事業の推進
- デジタル化と効率化によるコスト競争力の強化
- 海外市場の開拓
- 顧客基盤の拡大とリピート受注の促進
市場の競争激化
受注数が減ることで限られた案件をめぐる競争が激化し、価格を抑えた競争が進む可能性があります。安易な低価格受注は利益の減少を招くだけでなく、品質の低下や安全性のリスクも高めるため、慎重な判断が求められます。
連鎖倒産のリスク

関係企業の倒産リスク
建設業は多くのサプライヤーや下請け業者、金融機関と密接に関わっているため、取引先が倒産すると自社にも影響が及びます。このため、連鎖倒産のリスクが高まりやすい業界とも言えます。

支払い遅延の悪影響
関係企業の倒産によって、受け取り予定の支払いが滞ることもあり、資金繰りに大きな影響が出る可能性があります。とくに中小企業や下請け業者にとって、安定したキャッシュフローの確保が急務です。
プロジェクトの中断リスク
必要な部品やサービスを提供する協力会社が倒産すると、工事が中断・遅延するリスクが生じ、追加のコスト負担にもつながります。特に大規模なプロジェクトほど、こうした影響が深刻になるため、事前のリスク管理が重要です。
対策と今後の展望
コスト管理と効率化の推進
資材や労働コストの上昇に対しては、作業効率の改善や新技術・設備の導入によってコスト削減を図ることが重要です。従来の方法にとらわれず、作業プロセスを最適化し、効率を高める取り組みが求められます。
資金繰りの強化とリスク管理
キャッシュフローを強化し、取引先の信用管理を徹底することで、連鎖倒産リスクへの備えを強化しましょう。いざというときのために緊急資金の調達手段を確保しておくのも有効です。また、資産の流動性を高め、万が一に備えて即現金化できる状態を保つこともリスク対策の一つです。
新市場への進出
将来を見据えて、環境配慮型の建築やリノベーション事業など、成長が期待される新分野への進出も検討されるべきです。新たな市場ニーズに対応することで、安定した収益源を確保できる可能性が高まります。
まとめ
このように、さまざまなリスクに対して柔軟に対応し、現状の課題を理解した上で適切な対策を講じることが、建設業界における持続的な成長につながります。