当サイトでは建設CAD(2D・3D)およびモデリングデータを相互に扱うため、近年注目されている3Dプリンターを導入しており、3Dプリンター購入から活用方法などを掲載しています。
建設関連の情報や3Dプリンター(CG・モデリング)に興味のある方の参考になれば幸いです。
3Dプリンターの導入:こんな方におすすめです
3Dプリンターに興味はあるけれど基本的な情報を知りたい。
初心者でも失敗しない3Dプリンターを選びたい。
コスパのいい3Dプリンターを探している。
3Dプリンターを実際に使っているレビューを知りたい。
趣味やDIY、プラモデルやフィギュアに活用方法を知りたい
3Dプリンターの導入や設定、ソフトの使い方も覚えておきたい
3Dプリンターを使ううえでのランニングコストを確認しておきたい。
3Dプリンター選択基準と性能

当サイトにおける3Dプリンターの選択基準と性能は以下の通りです。

当サイトで使用している3Dプリンター:QIDI TECH Q1Pro
スライサーソフト:QIDIスライサー
使用フィラメント:QIDI TECH ABSフィラメント 1.75mm 1kg
出典:Amazon
FDM方式(熱溶積層方式)
細い樹脂(フィラメント)を高温で溶かし、ノズルから噴出しながら造形を行う積層方式です。
コストパフォーマンスが良く、メンテナンスも簡単です。
FDM方式の3Dプリンターで使用できるフィラメントには種類があり、代表的なものにはPLA・ABS・PETG・TPU・ナイロン・カーボンなどがあります。

フィラメントを使用するFDM方式とレジンを光で固めるSLA方式がありますが、用意する3Dデータの保存形式は同じです。
※「光造形方式(SLA)」は、レジン液に光を照射して層ごとに硬化させる方式で、FDM方式よりも精密な造形をすることが可能です。

3Dモデルの用途が、建設やDIY、プラモデルなど、部品や試作品ではFDM方式、フィギュアなど精密なものを作りたい場合はSLA方式がおすすめです。

使用する材料は、FDM方式ではフィラメント、SLA方式ではレジンを使用するため、3Dモデル造形に必要な準備やメンテナンスなども考慮しておけばいいですね。
チャンバー温度設定
ベースプレート(チャンバー)の温度を温める機能です。造形物を印刷する際に底部分に樹脂を定着させやすく、温度変化による反りを低減することができます。

今回紹介している3Dプリンターは、フィラメントを使ったFDM方式なので、樹脂の造形物をベースプレートに定着させるために、庫内の温度を一定に保つ必要があります。
印刷環境
本体がカバーや骨組みで保護されており、振動に強く、高さのある造形物にも対応しやすくなります。
また本体全体を囲うことで、ノズルやチャンバーの温度を一定に保ちやすくなります。

樹脂を立体的に積層する際に、室温によって造形物の品質に影響を及ぼしにくいために、3Dプリンター本体が箱状に覆われているものをおすすめします。
3Dプリンターのビルドボリューム(造形できるサイズ)
3Dプリントできるモデルのサイズです。FDM方式はSLA方式よりも、やや大きめのサイズの造形が可能です。
当サイトの使用範囲では、中程度のサイズがあれば十分で、目安として造形モデルのサイズは15~30cm以内としています。

3Dプリンターを使って、実用的なものを造形する場合は、サイズ以外にも強度を満足できるかを考えておく必要があります。
印刷速度
最近の3Dプリンターは600mm/sが主流となっているようです。そこそこの速度でも問題ないと思いますが、音や振動が気になる場合は印刷速度を抑える必要があるかもしれません。
(Q1Proでは音や振動はあまり気にならない程度です)
モデルデータの読み込み方法
USB、LAN、WiFi対応が理想。Q1Proを購入した時点では最悪USBを使ってデータを移動させるつもりでしたが、Wifi経由でデータを送信できるのは、便利です。
当サイトの環境では、データを作成するパソコンと3Dプリンターの設置場所(部屋)が分かれていますが、今後、複数のオペレータが同時にアクセスしたり、作業場を増設した場合にも対応しやすいと感じました。

3Dデータを一瞬でパソコンから3Dプリンターに送信できるのは、ありがたいですね。
3Dプリンターに付属しているスライサーソフト
主に3DCADデータ(SLA・3MF・STEP・OBJ・AMF・3DSなど)を3Dプリンターで細かい層ごとに分け(スライス)、必要に応じてモデルの支柱(サポート・サポート剤)などを自動的に作成してくれるソフトです。

QIDI TECH Q1Proでは、スライサーソフト「QIDI Slicer」が付属しているので安心して使えます。

別の3Dスライサーソフトを使用する場合は
最新ソフトに対応しているか、または独自ソフトでも使用可能かを確認しておくと良いでしょう。

多くの3DCADや3Dモデリングソフトは、これらのファイル形式に対応しています。
部品の交換性
今後3Dプリンターを頻繁に活用したい場合、ノズルやベルトなどの交換部品が入手しやすいか、メンテナンスがしやすいかがとても重要です。不具合にメーカーがすぐに応じてくれるか、ノズルやベルトなど摩耗しやすい部品の交換がしやすい機種が望ましいです。
ノズル噴出口の径(0.2mmや0.4mm)、また使用するフィラメントによっては(カーボンなど固い素材)ノズル口が摩耗しやすいこともあるため、固いノズルやスペアを用意する必要があるかもしれません。

3Dプリンターの購入を検討しているなら、交換部品の注文やカスタマーサポートが充実していることが大事です。
フィラメントの種類
FDM方式の3Dプリンターで使用できるフィラメントには様々な種類がありますが
機種によっては、同時に複数の色や素材のフィラメントが扱えるものあります。
当サイトでは現在は複数色のフィラメントを同時に使用する予定はないため、今後必要に応じて購入するつもりです。

造形物をそのまま使用せず、パテややすりなどの補修や
塗装などを行う場合は、フィラメント1色でも問題ありません。
3Dプリンターで使用できるフィラメントの代表的なもの
PLA(ポリ乳酸): 環境に優しく、初心者向けで加工しやすい。
ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン): 耐熱性と耐衝撃性に優れ、強度が必要な用途に最適。
PETG(ポリエチレンテレフタレートグリコール): 強度と柔軟性を兼ね備え、食品安全性が高い場合も。
TPU(熱可塑性ポリウレタン): 柔軟で弾力性があり、ゴムのような特性を持つ。
ナイロン: 耐摩耗性が高く、耐久性が求められる用途に適している。
用途に応じてフィラメントを選ぶことが、成功のカギです。
操作の簡単さ
スライサーソフトからのデータ移動や本体設定などが難しくない機種が望ましいです。
タッチパネルなど、シンプルな操作性を重視しました。
フィラメントの保管と除湿
厳密には、フィラメントが湿気を帯びると印刷品質が低下する可能性があるとのことです。
フィラメント保管用のケースや本体にフィラメント保管スペースのある機種もあります。
(衣装ボックスなどを改造してケースを自作している方もいます。)

フィラメントを3Dプリンター本体の中に収納できるものもあります。私の場合は、フィラメントむき出しのまま使用していますが、特に気になるようなことはないですね。
積層跡
3Dプリンターは樹脂やレジンを細かい層ごとに積み重ねるため、積層跡がわずかに残ります。
積層跡がどれほど目立つかは機種や素材によって異なりますが、ある程度、印刷時にスライサーソフトから調整することが可能です。

3Dプリンターで造形したモデルの「積層跡」が目立つか目立たないかが、3Dモデラーとして特に気になるポイントでもあります。
カメラ機能・エラーチェック(必要に応じて)
Q1Proを含むいくつかの3Dプリンターには、本体内部にカメラが取り付けられており、リアルタイムで印刷状況確認したり、造形状況をタイムラプスで再生することも可能です。
印刷の不具合などによって、樹脂が絡まってしまう(スパゲティ)状況をセンサーが感知する機能です。
この機能がある機種は限られますが、センサーの精度がどの程度なのかは不明です。
比較検討した主な3Dプリンター

今回比較した3Dプリンターは、Amazonで購入可能なメーカーを対象にしています。
QIDI:X-PLUS4、Q1 Pro、X-MAX3、X-PLUS3
FLASHFORGE:Adventure 4および5
Creality K1シリーズ:K1、K1C、K1 SE、K1 MAXおよびEnder3シリーズ
Banbu Lab:A1、A1 Mini、A1 Mini Combo、P1S、P1S Combo
ELEGOO:Neptune 3 Pro、Neptune 4
ANYCUBIC:Kobra 3 Combo、Kobra 2 Pro、Kobra 2 Neo
Sovol:SV06、SV06 Plus、SV07、SV07 Plus
より精密な造形が可能な光造形(LCD)プリンターも検討しています(例:NOVA3D)
光造形方式では、4K・8K・10K・12K・14Kなどの高解像度での出力が可能です。

これらの3Dプリンターを、すべて比較検討したうえで
QIDI TECH Q1Proを選びました。
より詳細な性能や機能を確認したい場合は、メーカーHPに記載されているデータを参考にして下さい。
それぞれのメーカーごとに表記方法が若干異なりますが、内容はほぼ同じです。
なお、この記事では3Dプリンターの基本的な用語などを簡単にまとめています。
QIDI
FLASHFORGE
Creality
Banbu Lab
ELEGOO
ANYCUBIC
Sovol
NOVA3D
3Dプリンターのレビューと使い方
ここからはQ1Proのレビューと使い方になります。

注文から約2日で商品が届きました。コンセントはアース付き3本脚でしたが、2Pコンセント変換アダプターを購入しわすれていたため、近所のホームセンターで購入しました。

楽天やAmazonの商品説明には
コンセントの事まで記載されていないことが多いです。


商品サイズの目安
段ボール梱包サイズ:幅約54cm×高さ59cm×奥行54cm
Q1Pro本体サイズ:幅約45cm×高さ50cm×奥行45cm
※フィラメントホルダーやフィラメントを取り付けると横幅は70cmほどになります。

3Dプリンターを置く場所も確保しておく必要があるんです。
私の場合、田舎に住んでいるので土地だけは広いですよ(泣)
本体付属品
Q1Pro本体には、最低限必要な道具やアクセサリーが標準で同梱しています。

説明書(日本語)・電源コード・LANケーブル
フィラメントホルダー(スプール・カバー・スタンド)
USBメモリー(スライサーソフトと3Dデータが入っています)
金属へら(スクレーパー)・マイナスドライバー・六角レンチ一式・スパナ
ノズルニードル・グリス・スティックのり

最初から必要なものは全部揃っています。
プラモデルやエアガンなど工作に使いたい場合
小型のルーターやスプレーなどもあればいいですね。
3Dプリンター導入時に必要なもの・あれば便利なもの

コンセント接地アダプター
工作用ニッパー・プライヤー(フィラメントの先端を切るなど)
スティックのり
スプレーボトル(清掃用のアルコールや水を入れる)
小型のほうきやブロアー(本体が熱や静電気を帯びて細かいチリなどが付着しやすいため)
なお加工(接着や切断)は紙やすり・接着剤・ルーター・ヒーター、塗装を行いたい場合はプラモデル用のエアブラシや塗料など、金属ネジなどの組み合わせをしたい場合は電動ドリルやビットなどがあります。
サイズや重量を確認したい場合は、デジタルノギスやデジタル計りなどがあればよいと思います。
樹脂フィラメント

QIDI TECH ABS Rapido フィラメント 1.75mm
フィラメントの種類は、造作するモデルの種類や用途によって選びます。
フィラメントは真空パックされ中に乾燥剤が入っているため、袋から取り出さない限りは湿気を吸ってしまう心配は無さそうです。
フィラメント保管時の湿気が気になる場合は、メーカー純正のケースもしくは真空パックやケースを用意するといいでしょう。
3Dモデルを作るソフト・形状を確認できるソフト
3Dプリンターのモデルは、3DCADやモデリングソフトを使用します。
3Dモデルはネット経由でも入手することができます。
また3Dプリンターに使用するモデルは、エクセルを使って形状を確認したり
打合せや資料の作成をすることもできます。

もちろんBlenderやMayaといった3DモデリングソフトでもOKで、実はExcelも3Dモデルに対応していますよ。
3Dスライスソフトでは「STL形式」のデータを使用します。

本体の設置手順

本体を取り出し外装フィルムをはがします。アダプターを付けてコンセントを差し込みます。
本体の電源は、コンセント差し込み口の隣にあります。(本体背面)
コンセントや電源スイッチ・温度調整のファンなどは本体背面にあるため、本体の設置位置は壁から少し離して置くといいでしょう。
初期設定
言語設定

日本語は「やまと」と表示されていますが、翻訳が若干間違っているだけなので、特に問題ありません。

やまと・・・魂のことでしょうか。
輸送用固定バンドを外します
本体画面の指示に従い、固定バンドを外します。ハサミやカッターでは他の部分を傷つける可能性があるので、ニッパーがあると便利です。

この辺は、プリンター本体の液晶画面に指示が出るので
画像は省略させていただきます。
ベースプレート固定ネジを外します
画面の指示に従い、ベースプレートを固定している4本のネジを外しまず。
(付属している六角レンチを使います。)
フィラメントホルダーの取り付け

本体左側に付属のホルダーを取り付けます。
フィラメントのセット
テスト用フィラメント、または用意したフィラメントをセットします。フィラメントを差し込むと本体チューブ内を通っていきますが、フィラメント先端がヘッド部分に接触した際、慣れないうちはどこまで差し込めばよいのか分からないかもしれません。
この時、フィラメントの先端を斜めにカットしておくとスムーズに入りやすくなり、フィラメントを軽く押し込んだ際にゆっくり溶けている感覚があればOKです。フィラメントを無理に押し込みすぎると、ノズル排出口にフィラメントが溜まってしまうため、軽く差し込む程度で十分です。

フィラメントの先端を、斜めにカット
初期動作確認
画面に表示されている手順に従って、フィラメントを少量流し込みます。溶けたフィラメントが細く流れ出ている事を確認し、本体の動作に問題がなければ初期設定は完了です。
本体の高さ調整(オートベッドレベリング)
プリンター本体の設置や移動をした際に、高さ自動補正(オートベッドレベリング)を行います。
画面右下の歯車アイコンを押して「オートベッドレベリング」を選択すると
自動で高さや歪みを検出してくれます。数分待てば完了します。

こういった準備作業は、機械に任せた方がいいと思います。
サンプルデータの印刷
サンプルデータを選択する

画面下のファイルアイコンを押すと、本体に内蔵されている3Dサンプルモデルの一覧が表示されます。
好きなモデルを選び、造形にかかる時間の目安を確認します。

小さなモデルを造形する場合、使用するフィラメントの量は3~5g程度です。

3Dプリンターではお約束の「船」をプリントしてみましょう。

ベースプレート(チャンバー)が水や油分で汚れていないか確認し、付属のスティックのりを塗ると定着が良くなります。

スティックのりのメーカーはどこでも構いません。
ケチらずにバンバン塗った方が印刷の成功率はあがります。

使用するフィラメントによってはノズル温度が高くなりすぎることがあるため、ノズルつまりの防止策として、本体上部のカバーを外しておくのも一つの方法です。また、造形に高い温度が必要なフィラメントを使う場合は、トップカバーとフロントカバーを閉じておく必要があります。印刷実行前に画面に警告メッセージが表示されますので安心です。

3Dプリンター庫内の温度をセンサーが常に監視していて
自動的に印刷に適した温度にしてくれます。
画面の指示を見逃さないようにして下さい。
印刷準備が整ったら印刷を実行します。
サンプル3Dモデルの印刷
印刷が開始されると、自動的にノズルとチャンバーの温度設定、ノズル洗浄、高さ調整の準備が行われます。
(室温やフィラメントの素材などによって異なりますが、準備にかかる時間は約5分程度です)
出荷時に内蔵されている3Dデータであれば、準備から完成までおよそ15分~20分程度です。
印刷が完了したら、やけどをしないように注意しながらベースプレートごと取り出し、付属の金属ヘラでモデルを取り外します。
のりは水で洗い流しておくと次回もスムーズに使えます。プレートは頑丈なため、湾曲させて造形物を外すことも可能です。


この船のサンプルは、かなり強度が高いです。

出典:Amazon
3D造形を失敗しないために覚えておきたいこと


最初は誰でも失敗しますから、実際に使ってみて
とにかく場数を踏むことが大事だと思います。

プリンター庫内の温度や高さ調整を機械が自動でやってくれるため
予想以上に失敗は少なく、人為的なミスの方が多いかも。
3Dプリンターは、フィラメントの種類や温度、わずかな傾きにより印刷が失敗する場合があります。
印刷の精度が極端に低い場合は、設置場所や温度などの環境が影響しているかもしれません。
ベースプレートからモデルが剥がれやすかったり、底面に反ってしまう場合は、スティックのりを十分に塗ってください。造形に何度も失敗するよりスティックのりを塗る手間やコストの方が被害は少ないです。
印刷する前の注意点として、使用するフィラメントとプリンターデータ設定に誤りが無いか確認しましょう。設定が異なっていると、溶着や積層具合にに不具合が生じたり、ノズルに負担がかかってしまうおそれがあります。
ノズルの先端にフィラメントが付着(巻き付いた)場合は、慌てずに印刷を一旦中止して、余分なフィラメントを手で取り除けば問題ありません。ノズルに問題が無ければ次回印刷時に自動でクリーニングされます。
高さのあるモデルを造形中、形状が歪んでしまう場合、プリンター本体の設置位置を低くすると効果的です。
なおQ1Proは操作パネルの位置が高いため、床に設置して印刷状況を確認しても特に不便は感じません。
3DプリンターQ1Proのおすすめポイント
Q1Proは非常に静かで振動も少ないため、アパートなどで使用しても騒音トラブルにはなりにくく、フィラメントが溶ける匂いもほとんどありません。
現在販売されている3Dプリンターの中では、比較的大きめのサイズまで造形できますが、設置スペースは1m四方あれば十分なコンパクトなプリンターです。
またフロントパネルとトップパネルは透明ですが。素材がガラスではないため落下や接触による破損のおそれが少なく、必要に応じて自動的に本体内部のライトがつくため造形途中の確認も簡単です。

見た目よりも実用重視です。