
近年、建設工事におけるICT施工や三次元データ(3D)の活用が注目されています。
建設物の図面を三次元データを使って立体的な管理を行なったり、ドローンや空撮による測量、3D眼鏡を使って完成イメージを伝えるなどの方法があります。
工事に使用する資材の規格情報やデータの共有などの活用法にはメリットもあります。

はじめまして。このサイトを運営しているMコンです。
建設業界に携わり、現場管理やIT活用を中心に実績を積んできました。
この記事では、私がこれまでの経験から学んだ知識を元に、具体的な事例と共に解説しています。少しでも皆さまの役に立つ情報を提供できれば幸いです。
3Dソフトの導入や専門的知識・技術の習得が難しい場合もある
三次元データの活用は便利ですが、ソフトの導入や専門的知識や技術の習得が難しい点もあります。
建設業の労働者や技術者の不足、経験者の高齢化や若者離れも進んでいるのも事実です。
3Dデータを扱うためには、2DCADの知識に加えて3Dの知識や技術も習得する必要も少なからずあります。
この記事では、横断図(断面図)を使った三次元データについて簡単な解説をしています。
X軸・Y軸・Z軸など、やや複雑な内容が含まれていますが、軽い気持ちで読んで頂ければ幸いです。
なお、X座標とY座標についての記事はこちらから
X軸とY軸のプラスマイナス:座標間距離の計算方法の図解
横断図を立体的に表現する前のおさらい
今回は三次元表現の簡単な例として、TURBOCADを使った横断図の立体化を行ないます。
下の図は、NO.0・NO.1・NO.2の横断図サンプルです。

図の下にあるNO.0が起点、そこからNO.1、NO.2と続いていると仮定します。
「CL」は各測点の中心線(センターライン)を表し、NO.0からNO.2を直線としています。
また、横断図(断面図)は、地形や構造物を横断方向(または断面方向)から見た状態の図を表します。
横断図は、横と高さの2方向のデータです
横断図についての詳しい内容は割愛させて頂きますが
横断図のデータは、折れ点の位置(横の幅)と高さを横断方向に結んだ折れ線です。
(今回は構造物などを表示していないため、各測は単純な一本の折れ線になります。)
横断図は、X方向とZ方向の情報を持った、横方向と縦方向の2方向(2D)の要素を持ったデータということになります。
横断図を紙に印刷して、紙を直角に立てた状態を思い浮かべてもらえれば分かりやすいかもしれません。
平面図と横断図を組み合わせると三次元データになります
三次元のデータとは、X軸・Y軸・Z軸の3つの要素を持ったデータ(情報)です。
また、図を真上から見た「平面図」はX方向とY方向の情報をもった横と奥行き(または幅・延長など)の2つの要素を含む二次元のデータで、高さの要素が含まれていないところがポイントです。
ここで、先ほどの横断図に含まれているZ軸のデータを組み合わせることによって「三次元化(立体化)」ができるようになります。
つまり、横断図と平面図を組み合わせることによって、平面を立体にすることができます。
横断図を立体化させる方法
先ほどの横断図を、必要な部分だけにしたものが下の図です。

赤い折れ線は「地形」を表ししているものだと捉えて貰っても構いません。
NO.0からNO.2までの中心線は直線としており、分かりやすいように左右の折れ点の数も同じにしています。
(他にも理由はありますが、ここで詳しい解説は省略させて頂きます。)
また、各測点の折れ線は、高さをランダムに変えてあります。
(1)横断図を縦方向に回転させる
先ほど記載したように、横断図のデータはX軸とZ軸を使用しています。(横の位置と高さ)
横断図のデータは、パソコンの画面を見たときや紙に印刷した場合、本来Z軸(高さ)のデータは垂直になっていなければなりません。
下の図は、図面を斜め上から見たものですが、NO.0・NO.1の横断図を、図面に対して垂直に立っていることが分かるでしょうか。

同様にNO.2の横断図も、図面に対して垂直に回転してみましょう。
下の動画は、NO.2の横断図を縦方向に回転させている状況です。
(CADはTURBOCADを使用しています)
Turbocadの基本操作:初心者向けのTurbocadの使い方と基本機能
(2)3つの横断図が、図面に対して垂直になりました
NO.0からNO.2までの横断図を垂直にしたものが下の図になります。
※図は斜め上から見ています。

横断図は、地形や構造物を断面方向から見ている図なので、本来はこの状態が正しい形になります。
横断図を平面的な図面や紙に表示した場合、高さのZ軸をY軸に代用しているからです。
折れ線データに奥行きを加えると三次元データになります。
横断図(折れ線)は、幅と高さの情報だけですので、このままでは2次元のデータのままです。
三次元のデータを作るためには、幅と高さの他に奥行きの情報を与える必要があります。
下の動画は、NO.0からNO.2までの測点と断面データを、奥行き方向に繋げたものです。
折れ線は二次元データですが、奥行きを与えることによって「面(メッシュ・ポリゴン)」になります。
図面の三次元化が必要なものを選択する
建設工事の図面には、工事に必要な情報が「正しく漏れなく」記載されていなければなりません。
図面の三次元化は、従来の図面を立体的に表現することで、さらに細かい情報を得ることができます。
しかし、図面の三次元化には労力と手間・コストがかかる場合もあるため、全ての図面を三次元化するのではなく、立体化が必要な図面を選択し、データに盛り込む情報を「どこまで記載するか」が重要です。