STL形式は、3Dプリントでよく利用されるファイル形式です。CADソフトで設計された3Dモデルやプロトタイプを3Dプリンターで出力する際に、この形式が使用されます。
近年、熱溶積層方式(FDM方式)や光造形方式(SLA方式)が3Dプリントの主流となっており、STLファイルを使って様々な形状を立体的に造形することが可能です。


STL形式の特徴として、3DゲームやVR、映像などのCGとは異なり、印刷に使用するフィラメントやレジンなどの素材を直接使って物理的なオブジェクトを造形するため、テクスチャを使用しない点が挙げられます。例えば、木目模様を表現したい場合、3Dモデルの表面に凹凸を細かく造形して表現します。プリンターや出力方法により異なりますが、精度は0.02~0.4mm程度に対応しています。
STL形式のメリット
STL形式を利用することで、設計やプロトタイプの作成、そして高精度で実用的なオブジェクトの造形が可能です。あらゆる分野で活用でき、特に建設業などでは3Dプリントで家を建てるプロジェクトが話題になるなど、活用が進んでいます。また、樹脂やカーボン、金属などの多様な素材も3Dプリントに対応しており、日々進化しています。
3Dプリント技術の活用によって、従来の手作業では製造が難しい形状や高コストであったものの生産が容易になり、人件費や加工期間も大幅に削減できる点が大きなメリットです。
電子納品形式SXF(P21)との違い
STL形式は、3Dプリント向けに設計された形式ですが、日本の公共工事での電子納品にはSXF(P21)形式が使用されます。この形式は設計や施工管理の成果物をデータで納品するためのもので、2D設計データに特化しています。例えば、日本ではJWCADのような無料CADソフトもSXF形式に対応しているため、広く使用されています。また、SXF形式は線種やレイヤーといった設計・管理に必要な規格が統一されており、管理の効率を図るのに適しています。
無料CADスクールはこちら2D図面を3Dに変換するには?
多くのCADソフトは、AUTOCADのDXF形式に準拠しているため、2D図面をDXF形式に変換することで3D対応が可能になります。DXFは3Dデータにも対応しているため、元の図面が2DであってもDXFに変換すれば3D図面として利用でき、他のDXF対応CADソフトとデータの共有や編集が容易になります。また、近年の3DプリンターやBIM/CIMソフトウェアでは、DXFデータからSTL形式に変換する機能が備わっているため、スムーズに3Dプリントに対応できます。

FBX形式の取り扱い
FBX形式は、ゲーム、VR、3D CG映像などで広く使用されているファイル形式です。主に3Dモデリングデータやアニメーション情報を含むため、様々なデジタルメディア制作で重宝されています。また、FBXからSTL形式への変換も、ほとんどの主流の3Dソフトウェアで対応しています。ここでは、FBX形式の取り扱いに役立つ主要なソフトウェアを紹介します。
Autodesk Maya
世界中で使用されるMayaは、FBX形式の取り扱いに優れており、プラグインを使えばSTL形式へのエクスポートも可能です。特にアニメーション機能が豊富で、ゲームや映画制作でもよく使用されています。
Autodesk 3ds Max
3ds Maxは、建築ビジュアライゼーションやゲーム制作で多くのユーザーに支持されるソフトウェアで、FBXファイルの取り扱いが得意です。インポート/エクスポート機能が充実しており、STL形式への変換も簡単に行えます。
超入門Autodesk 3ds Max建築ビジュアライゼーション
Blender
無料でオープンソースのBlenderも、FBX形式に対応しています。FBXアドオンを利用することで、FBXファイルを編集したり、STL形式にエクスポートしたりすることが可能です。手軽に利用できるため、多くのクリエイターに人気があります。
(解説動画付)ミニチュア作りで楽しくはじめる 10日でBlender 4入門
Cinema 4D
Cinema 4Dはモーショングラフィックスで人気があり、特に3Dアニメーションや視覚効果を得意とするソフトウェアです。FBX形式のファイルを簡単に扱えるため、3Dプリント用のデータ編集にも対応できます。
CINEMA 4D プロフェッショナルワークフロー:コンセプトから完成ビジュアルまで、第一線で活躍するクリエイターたちによる制作ノウハウ
UnityとUnreal Engine
ゲーム開発エンジンであるUnityとUnreal EngineもFBX形式を直接インポートできるため、ゲーム制作では欠かせないツールです。両エンジンとも、FBX形式をSTLなど他の形式に変換する際に一部のプラグインを利用することで、プロジェクトに応じた形式の変換が可能です。
Unreal Engine 5 リアルタイム ビジュアライゼーション
まとめ
建設工事において使用されるCAD図面は、設計や管理を円滑に進めるためのツールとしてだけでなく、さまざまな分野で応用が可能です。STL形式を活用することで、これまで築いてきた現場のノウハウや技術を最大限に活かしつつ、3Dプリントやプロトタイピングによって新たなアイデアや工法を生み出す期待が高まっています。設計や検証の精度が向上するだけでなく、施工の効率化にもつながります。
こうした新技術と従来の技術の融合により、建設業界全体がより柔軟かつ創造的に進化していく可能性を秘めています。STLや3Dプリントを通じて、革新的な建設手法や工程が次々と実現される未来に、今後も目が離せません。