近年、建設業界においても資材の価格の高騰や購入した資材(製品)納入の遅れなどが懸念されています。
資金調達や労働者への給与・資材購入など、事業を継続するにはお金は重要です。しかし、実際は中小企業の多くは、今でも「どんぶり勘定」で経営を行っているケースが見受けられます。

はじめまして。このサイトを運営しているMコンです。
建設業界に携わり、現場管理やIT活用を中心に実績を積んできました。
この記事では、私がこれまでの経験から学んだ知識を元に、具体的な事例と共に解説しています。少しでも皆さまの役に立つ情報を提供できれば幸いです。
実行予算を建設業がシビアに取り組む必要性
数十年前までは、仕事と労働力が豊富で、単純に現場の数さえこなせばそれなりに利益を残すことができていました。しかし、この古いやり方では、現代の競争激しい建設業界に対応することは難しいのが現実です。
建設工事を適正かつ安全に実施するのはもちろん、会社の健全な経営を続けるためには、事前に実行予算を作成し、実際の費用と利益を原価管理することが非常に重要です。

積算データをみて予算を把握したつもりにならず
実際にいくらかかるのか実行予算を組むことが重要です。
実行予算なしで工事を進めた会社の失敗例
かつて、どんぶり勘定や経験則だけで工事を進める会社がありました。彼らは詳細な実行予算を組まず、感覚的に材料を発注し、工期も「だいたいこのくらい」と見積もっていました。しかし、その結果、材料の拾い落としが発生し、追加発注による納期の遅れや余計なコストがかかることが頻繁にありました。さらに、工期が思った以上に長引いて人件費が膨らみ、最終的な利益は大幅に減少。設計と現場のズレにも気づかずに施工を進めたため、後になってやり直しが発生し、余計な負担が増えていました。
どんぶり勘定で工事を進める危険性
- 資材の過不足(拾い出しミス)
- 予期していなかった工程の遅れ(人材や機械、仮設などの計画不足)
- 作業の手戻り、やり直し(作業コストの増加)・・・など
事前に予算を把握し、管理を徹底した場合
そうした状況を見て、私は同じ失敗を繰り返さないように徹底的に実行予算を組むことを意識しました。まず、過去の工事データを参考にしながら、材料費や工期を現実的な数値で見積もり、抜けがないか何度も見直しました。また、「最短で終わらせる」のではなく「余裕をもっても赤字にならないスケジュール」を組み、急なトラブルにも対応できる体制を整えました。さらに、施工前に設計図と実行予算を細かくチェックし、現場での手戻りがないように徹底した結果、コストと納期のズレが最小限に抑えられ、発注者からの信頼を得ることができました。

工事を進めるのはとても大変ですが、最初の段階で時間をかけて準備すれば、リスクを大幅に削減することができます。
工事費の積算と「実行予算」・「原価管理」の違い
建設工事の積算、実行予算、および原価管理は、同じ「お金」に関わるものですが、それぞれ内容は異なります。
工事積算
作業の流れを標準的な歩掛かりを元にして積み上げたものです。
(代価表や歩掛かりなどは○○当り単価を使用することも一般的です。)
「積算ソフト」を使用し、定期的な価格の見直しが行なわれています。

単価や経費率などのデータは、常に最新の価格が適用されています。
実行予算
工事を請け負う会社が、自社が持つ専門性、実績や規模に基づいてどれくらいの費用でどれくらいの利益を残せるかを見積もる計算です。(現場までの距離が近い・自社保有の重機がある・資材を安く仕入れることができるなど)

積算価格と実行予算は似ていますが、実は違います。
標準の歩掛に対して、自社の資材の購入価格や下請けに支払う金額
現場に投じる経費など、リアルな金額を入力することで
実際どれだけの費用がかかるのかを把握する必要があります。
原価管理
請け負った工事が予算に基づいて実行されているかを監視し、実際の費用と収入の収支を管理・把握するものです。
工事積算は、工事費の合計を算出する際に使用され、競争の激しい入札環境では精緻な計算が求めらる非常にシビアなものですが、実際に現場を施工するための実行予算は、特定の建設工事における個別の費用と利益を評価し、原価管理は実際の実行と予算との一致を確保するための監視手段です。
「安かろう悪かろう」な建設工事が悪循環な理由
もちろん工事における実行予算や原価管理には、時間もコストもかかります。
しかし工事にかけられる費用が少ないからといって「安かろう悪かろう」な建設工事はおすすめしません。

今後、安くて品質の悪い商品を量産するか、適正価格の商品か、やや高めで品質の良い商品を売りにしていくか、判断の時です。
信頼性の低下
品質を犠牲にした建設工事は、完成後の問題や欠陥が発生しやすくなります。これは建設物の信頼性に悪影響を与え、失った信頼性を取り戻すことは容易ではありません。
安全性の低下
十分な安全対策がなされていない建設工事は、安全規制や基準をが不十分となり、安全性が脅かされる可能性が高まります。これは重大な事故や怪我のリスクを増加させます。
維持コストの増加
品質の低い工事は、工事完成後の施設の維持コストが高まります。設物やインフラに修理や改修が必要になる可能性が高まります。工事のやり直しには「倍以上のコスト」がかかります。
競争と価格競争
建設業界の価格競争が激化すると、工事業者はコストを削減するために品質を犠牲にすることがあります。これは業界全体の品質を低下させる可能性があります。また労働者の賃金低下や機械の用途外使用などの問題が発生するおそれがあります。

工事価格と品質の低下は悪循環に繋がります。
価値と信用を落とさないためには・・・
また民間発注の建設工事であっても「安くなければ工事させてもらえない」という考えは「危険」です。
工事を安全・適切に行なうためには、会社にとって必要な費用が存在します。
工事の実績作りのための安易な値引きは、あまり良い結果を残さないことの方が多いです。
請負い金額の大きい公共工事でも、「安ければ落札できる」ということはありません。
その会社が持っている技術や実績評価、どのような方法(工法)で工事が行なわれるか、工事を期日内に終わらせることができるのかなど、細部にわたって検討されます。
お金の管理は「面倒」では済ませない
会社経営においてお金の管理は極めて重要です。給与支払い、購入材料の支払い、下請け業者への支払い、現場や会社の経費、税金などを正確に管理することは、会社の経済的な健康状態を維持する鍵です。
従業員への給料の支払いを怠れば、モチベーションの低下や信頼喪失、不注意によって現場での事故につながる可能性さえあります。資材や下請け業者に適切に支払わなければ信用を失い、事務所の経費や税金を滞納すれば経済的な困難が生じます。
「ヒト・モノ・カネ」の効果的な管理は、安全で品質の高い工事を提供し、経営の持続可能性を確保するために不可欠です。これらの要素をしっかりと管理し、今後の成功への基盤を築くことが必要です。

普段からしっかりと管理や経費などを把握し
より強固な体制作りを築くことが近道です。
書籍で学ぶ >>改訂10版 土木工事の実行予算と施工計画