高齢化と建設業の役割
高齢化は社会全体の大きな課題です。
建設業に携わる方々自身も、引退が近い年代や体の不調を抱えながら現場に立っているケースが少なくありません。血圧を下げる薬を飲みながら働く人、足腰の痛みを我慢して工事に臨む人──その姿は決して珍しくないでしょう。
同時に、利用者である家族や地域の高齢者・障がい者も、安心して暮らせる環境を求めています。公共工事も民間工事も、本来は「住みやすい環境づくり」を支えるのが建設の役割です。
専門的な意見の裏側
このサイトではこれまで、実際の施工に基づいた知識と工夫をまとめています。例として
- 安全な駐車場舗装(コンクリート、滑り止めなど)
- スロープや手すり設置の工夫
- 介護現場でのヒヤリハット事例
といった話題を紹介してきました。
図面や法規制だけではなく、「実際に暮らす人が使いやすいか」「安全に使ってもらうためには、どんな工夫や技術が必要か」という視点を重視してきたのです。
スロープや手すりには一定の指針や市販品がありますが、それだけでは本当に使いやすいとは限りません。要望を整理し、現場に落とし込むのが建設業の技術であり、経験の積み重ねが生きる部分です。
この記事では、高齢者や障がい者の方が安心して暮らすために
どの部分は本人たちができる範囲か
どの部分は工事や専門的な対応が必要か
さらに定期的な管理が必要になる箇所はどこか
を整理しています。
また、よくある要望や困りごとをQ&A形式でまとめましたので、住まいの改善や外構・室内の工事を検討する際の参考にしてください。
人も家も同じように歳をとる:ライフステージの変化にあわせたメンテナンス
人が年齢を重ねると足腰が弱くなるのと同じように、建物も年月とともに劣化していきます。
「そろそろリフォームかな?」というサインは、実は 住む人の年齢や生活の変化と重なることが多い のです。

住宅関連のリフォームやリノベーションの
チェックポイントなどを以下の記事で紹介しています。
リフォーム vs リノベーション!あなたの家に合う改修方法はどっち?
なぜリフォームはトラブルが多いのか?後悔しないための事前対策
「建物の寿命」と「住む人のライフステージ」をセットで考えると、リフォームやリノベーションのタイミングがわかりやすくなります。

ライフステージの変化とは
・子どもが生まれたり、結婚や引っ越しをしたとき。
・子どもが独立したり、体が思うように動かなくなってきたとき。
→ こうした「暮らしの節目」がライフステージの変化です。
高齢者・障がい者が安心して暮らすための工夫
生活者の声を起点にして、業者が専門知識で形にする
高齢者や障がいのある方が安心して暮らすためには、まず「どんな場面で不便を感じているか」をしっかり聞き取ることが大切です。その上で、施工業者が専門的な知識や工夫を活かして、生活に合った提案を行います。つまり、要望と技術を組み合わせて“暮らしやすい形”をつくるイメージです。
ここで重要なのは
- どんな状況を解決したいか(例:段差でつまずく、浴室が寒い など)
- 自分にはどんな改善方法が合っていると思うか
- 知り合いから聞いた事例や、テレビ・雑誌で見かけた商品・施工例

実際に住む人が直接伝えることが難しい場合は、家族や介護者が伝えても構いません。本人の身体の状態を、工事施工業者が完全に理解することは難しいですから、具体的な要望を伝えることで改善方法(工事・工法)の絞り込みがしやすくなります。
- 要望をどう理解し、構造的にどんな方法で解決できるか
- 代替案があるかどうか(より安全・低コストな選択肢など)
- 過去に似た依頼があった場合の対応例
- 商品や材料に関する知識
- かかる費用や工期の目安

例えば、メーカーのメンテナンスや不具合時の対応
(○○の型番ではどうだったかとか)
専門的な意見、アドバイス、工事に必要な期間や費用など。

また既存の機械や構造の修理や交換部品で問題が改善できるなら
それも提案のひとつです。
高齢者・障がい者向けのシーンQ&Aまとめ
玄関まわり・外構・駐車場のQ&A
- 玄関の段差が高くて出入りが大変です。どうすればいいですか?
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段差解消スロープや、手すり付きの踏み台を設置する方法があります。住宅改修制度を利用すれば、費用の一部を助成できる場合もあります。(助成金の申請は、最寄りの市区町村:生活課・住民課などへ相談)
- 雨の日に玄関前で滑りやすいのですが、対策はありますか?
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滑り止め加工されたタイルやゴムマットを敷くことで改善できます。また、庇(ひさし)や屋根を延長して雨のかかる範囲を減らすのも効果的です。
コンクリート舗装 左官仕上げ「刷毛引き」のご紹介 - 車いすを使うので玄関前のスペースを広げたいのですが可能ですか?
-
外構工事でアプローチ幅を広げたり、スロープを設置することが可能です。敷地の形状に合わせて「直線型」か「折り返し型」などのプランを選べます。
※直線型・・・1/12などのスロープ(勾配)が敷地内に収まる場合
※折り返し型・・・敷地や建物の形状によって制限がある場合(L字・U字型が一般的) - 夜に玄関まわりが暗くて不安です。どんな工夫がありますか?
-
人感センサー付きライトを設置すれば、自動で点灯し防犯面でも安心です。足元を照らすポールライトや、ソーラー式照明も人気です。
>> AMAZON 屋外センサーライト - 手すりをつけたいのですが、どこに設置するのがよいですか?
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玄関ドア横、階段の昇降部分、スロープの途中など、動作の「切り替えポイント」に設置すると効果的です。体格や利き手に合わせた高さ調整も大切です。
>> AMAZON 室内手すり300mm - 荷物や来客があったとき、外の様子を確認したいです。どうすれば安心ですか?
-
インターホンカメラやセキュリティカメラを設置することで、スマホやモニターから外の状況をリアルタイムで確認できます。夜間用ライトや録画機能があるとより安心です
>> AMAZON パナソニックインターホンカメラ(工事不要)
- 防犯対策として玄関まわりをどう整えればよいですか?
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見通しを良くして死角を減らす、センサーライトを設置する、防犯カメラや門扉の鍵を更新するなどの対策があります。高齢者でも簡単に操作できる設備を選ぶことがポイントです。
- 雪が多い地域に住んでいますが、除雪や排雪が困難になりました。どう対応できますか?
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スロープや駐車場の傾斜を工夫して雪が自然に流れるように設計する、融雪設備(電気や温水式・地下水の利用)、除雪しやすい通路幅の確保、または自治体の除雪サービスや業者への依頼も検討できます。
- 庭木の手入れができず、枝が隣家に伸びて困っています。どうすればいいですか?
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高齢者や障がい者でも対応できるように、専門業者による剪定や伐採を依頼するのが安全です。場合によっては不要な木を撤去し、管理しやすい庭に改修することも検討できます。
部屋の出入り・窓まわり Q&A
- 部屋の間口が狭くて車椅子や杖で通るのが大変です。どう改善できますか?
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扉を引き戸に変更したり、間口を広げる改修を行うことで通行をスムーズにできます。家具の配置を工夫して通路を確保することも重要です。壁に電気スイッチがある場合、移動してもらうことも可能です。
>> 建築会社に「間口を広げて欲しい」と伝える
- 段差や床の境目でつまずきやすいです。どうすれば安全ですか?
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スロープや段差解消材を使用し、床の段差を緩やかにする工事が有効です。また、境目を目立つ色や滑り止めにするとさらに安全性が高まります。
>> AMAZON 室内段差解消スロープ(粘着テープ式:工事不要)
- 室内が暗く、目印の灯りが足りません。どう改善できますか?
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センサーライトや常夜灯の設置で移動時の安全を確保できます。窓からの自然光を取り入れる工夫もおすすめです。
>> AMAZON 人感センサーライト(暖色)
- 窓が開けにくく、換気や操作が不便です。どうすれば簡単になりますか?
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開閉が軽く操作できる窓やレバー式の取っ手に変更、あるいは電動開閉システムの導入で負担を軽減できます。既存の窓の交換には、外壁・内壁クロスなどの補修も行うケースが多いです。
>> 既存の窓ガラスにヒビが入った場合も交換してもらえます。
- 廊下や出入り口にコードや荷物があり、引っかかって危険です。どう整理すれば安全ですか?
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電源コードは壁沿いにまとめる、家具や荷物は移動しやすく整理する、段差や障害物をなくすことでつまずき防止になります。
室内の安全・電気・火元・設備のQ&A
- 棚や家具の転倒が心配です。どう対策すればよいですか?
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壁に固定する、転倒防止用の金具やストッパーを使用する、重い物は低い位置に収納することで安全性を高められます。
>> AMAZON 家具転倒防止ポール(設置は簡単ですが無理はしないように)
- 床の傾きや傷、湿気が気になります。生活への影響はありますか?
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床の傾きや傷はつまずきや転倒の原因になります。専門業者に確認して補修・補強することが重要です。湿気はカビや滑りの原因になるため、通気や除湿対策を行いましょう。
- 絨毯や小さな段差で転倒しやすいです。改善方法はありますか?
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滑り止めマットを敷く、段差を緩やかにする、床材をフラットにすることで安全性を高められます。
- 暖房・冷房・換気が使いにくく、操作が大変です。どう工夫すればいいですか?
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リモコンやスイッチを操作しやすい高さに設置する、タイマーや自動制御機能を活用する、換気口の位置や吸排気の流れを確認して調整すると負担が減ります。
>> AMAZON 大画面室温・湿度計
- ブレーカーが落ちたとき、復旧や懐中電灯の確保が不便です。どう準備すればよいですか?
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ブレーカー近くに分かりやすい表示を付ける、操作しやすい位置に設置する、懐中電灯を常に手元に置くことで緊急時に備えられます。脚立を使用する場合は転倒しないように注意が必要です。
Mcoon:建設工事の情報
ヒヤリハット事例:椅子の上での電球交換時の転倒防止・安全対策 椅子を使って電球を交換中に椅子や脚立がぐらつき、バランスを崩して転倒しかけたヒヤリハット事例を紹介しています。使用する足場や床の状況、暗所作業などを改善します。 - 火元やガス器具の安全が心配です。どう対策できますか?
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センサーやアラームを設置する、使用後は自動消火機能を活用する、ガスの元栓やバルブの操作が簡単にできる位置に設置することが有効です。
- 水道や洗い場の使い勝手が悪いです。改善のポイントは?
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高さや位置を調整して使いやすくする、古い配管は交換、元栓や蛇口操作が簡単な製品を選ぶことで安全性と利便性が向上します。(水道管が老朽化して水漏れしている場合もあります)
- 電話やスマホ、タブレットの利用が不便です。どう工夫すればよいですか?
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高齢者でも操作しやすい端末や設定にする、固定電話や簡単操作のタブレットを併用する、料金や契約内容も分かりやすく整理することが大切です。
- 家にいると寒さやだるさを感じます。冷暖房の取り扱いについて教えて下さい。
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高齢者は室温や体温のバランスをとるのが難しくなりやすく(忘れている場合も)暖房温度を上げすぎたり、夏に冷房を避けて熱中症になるケースが多いため、機械の設定を確認できるようにしておきましょう。
また給排気に問題がないかチェックしておくのも大事です。
高齢者・障がい者の生活支障 Q&A 生活全般
- 移動や歩行が不安です。どんな工夫ができますか?
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廊下や階段に手すりを設置する、滑り止めマットを敷く、段差を緩やかにする、杖や歩行器を活用することで転倒リスクを減らせます。
- 荷物の持ち運びや買い物が大変です。支援方法は?
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キャスター付きカートを活用する、玄関や室内に収納場所を工夫する、宅配サービスや近隣支援制度を利用するのが有効です。
- 視力や聴力の低下が生活に影響します。どう対応できますか?
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明るい照明やセンサーライトを設置する、文字や表示を大きくする、音声通知や振動アラームを利用する、聞き取りやすい電話機や補聴器を活用することが改善につながります。
- 認知症や記憶力低下で、操作や管理が難しいです。支援策はありますか?
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スイッチやリモコンにラベルを貼る、操作を簡単にする、タイマーや自動化を活用する、家族や介護者と連携した見守りシステムを導入すると安心です。
>> AMAZON 室内防犯カメラ(見守りカメラ)アレクサ対応
- 入浴・トイレ・洗面などの動作が不便です。改善のポイントは?
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手すりや滑り止め、段差解消を行う、椅子や踏み台を活用する、洗面台や浴槽の高さを調整する、温度調整が簡単な水栓を導入すると安全性が高まります。
- 室内外の温度や湿度が不快で健康に影響します。対策は?
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エアコンや暖房機の位置を使いやすくする、換気を十分に行う、断熱材やカーテン、除湿器・加湿器を活用して快適な環境を保つことが重要です。
>> AMAZON シャープ空気清浄機・加湿器
- 緊急時や災害に備える方法は?
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非常用ライト・懐中電灯・非常食・水を確保する、避難経路を確認する、簡単にアクセスできる電話や連絡手段を整えることが大切です。
- 生活空間の整理や片付けが負担です。どうすれば?
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収納の高さや場所を工夫する、不要な荷物は整理・処分する、介護サービスや家事支援を活用して安全に生活空間を維持します。
高齢者・障がい者の生活支援と建設業者の役割
この記事で紹介したQ&Aを通してわかるのは、高齢者や障がい者が安心して暮らすためには、生活する人自身が解決したい課題を理解し、日常でできる工夫を取り入れることと、建設業者など専門家の知識や経験を活用して安全・快適な環境を整えることの両方が重要だという点です。
例えば、室内の段差や手すり、滑り止めマットなどは日常の工夫でも改善できますが、段差の解消やスロープ設置、昇降機の設置などは建設業者の専門的な知識や施工技術が必要です。
また、照明や換気、温度調整、配線整理なども、施工の工夫や設備提案によってより安全で使いやすい環境にできます。
生活者が自分の状況や希望を正確に伝え、業者がそれを理解して構造的・技術的な対応を検討することで、住む人にとって使いやすく、安心で快適な住環境が作られます。
Q&Aやチェックリストを参考にしながら、日常でできる工夫と専門家への相談を組み合わせることが、高齢者や障がい者の生活支援につながります。
まとめ:高齢者・障がい者が安心して暮らす住まいづくり
生活者の状況把握が第一歩
- 日常で不便に感じることや制限、過去の経験や参考にしている商品・施工例などを整理する。
- 生活者自身が「こうしたい」「こうできると助かる」と思うポイントを明確にする。
施工業者は提案と代替案を用意
- 経験や専門知識から、安全で使いやすい改善方法を検討する。
- 費用・工期・商品の特性を踏まえ、複数の選択肢を提示する。
外構・玄関まわりの工夫
- 段差を減らすスロープや手すり、夜間照明、カメラ・防犯対策。
- 雪や庭木の手入れなど、定期的な管理の難しさを補う施工。
部屋の出入りや間口の安全性
- ドアの開閉や廊下の幅を確保し、段差や境界を見やすくする。
- 窓や換気口、手すり・スイッチの位置にも配慮。
室内の安全対策
- 転倒防止(絨毯、コード整理)、家具の固定、段差の解消。
- 暖房・冷房・換気の適切な設置、火・水・電気の安全確保。
日常生活の利便性向上
- 作業しやすい高さの設備、移動しやすい導線、非常時の対策(懐中電灯、ブレーカー復旧など)。
- 高齢者・障がい者が自立して安全に生活できる工夫。
チェックリスト活用で漏れを防ぐ
- 外構・玄関・室内・設備ごとに整理したチェックリストを使えば、生活者と施工業者の両方が抜け漏れなく対応可能。




